このレクチャーでは、配偶者居住権について学習します。
このレクチャーの全体図
概要
配偶者居住権は、夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者の居住権を保護するための権利になります。配偶者は、居住していた建物の全部について、亡くなるまで無償で使用・収益する権利が認められます。配偶者居住権は、建物価値を「所有権」と「居住権」に分けて考え、配偶者は建物の所有権を持っていなくても、居住権を取得することで引き続き住み続けることができます。
次の図は、前橋地方法務局のホームページで公開されている資料になります。(https://houmukyoku.moj.go.jp/maebashi/page000001_00235.pdf) この図を使って、詳しく説明したいと思います。
まず、夫の財産が『住居2,000万円と現金3,000万円』の場合、民法改定前は、図の真ん中のように、妻が自宅の『所有権2,000万円と現金500万円』を受け取り、子が現金2,500万円を受け取るような分け方になってました。この場合、妻の立場からすると、住む場所はあるのですが、生活費が足りなくなってしまうという問題がありました。
次に、民法改正後の図の右側を見てみますが、自宅の「所有権」と「居住権」を分け、それぞれ1,000万円の価値があった場合、妻は『居住権の1,000万円と現金の1,500万円』を受け取ることができます。子は、『所有権の1,000万円と現金1,500万円』を受け取ることができます。この場合、妻が居住権を持っているので、配偶者が亡くなるまで無償で使用することができます。そして、現金も1,500万円取得することができるので、老後の生活費も賄う事ができます。子の場合は、所有権を持っていますので、妻が亡くなった後は、この自宅は子の所有物となります。
このように、遺産分割の際に、不動産を「所有権」と「居住権」に分けることができるようになった結果、配偶者である妻は住む場所と生活費を得ることができるようになりました。
要件
- 被相続人の、法律上の配偶者であること
- 内縁関係はNG
- 被相続人の所有していた建物に、相続開始時に配偶者が居住していたこと
- ①遺産分割 ②遺贈 ③死因贈与 ④家庭裁判所の審判 のいずれかにより、配偶者居住権を取得したこと
- 配偶者居住権は、所有権と同じように、相続により取得する必要があります
その他注意点
配偶者居住権を第三者に対抗するには登記が必要です。
これは、不動産の所有権の登記と同じで、居住権が誰にあるのかを、明確に記録する必要があります。下図の権利部乙区(一番下の欄)のように、配偶者居住権を設定し、亡くなるまでの間、居住権があることを登記する必要があります。
https://legal-heart.com/haigushakyojukentouki/
まとめ
今回は、配偶者居住権について学習しました。
配偶者居住権は、2020年4月に施行された、配偶者の居住を守るための新しい制度になります。概要、要件などをしっかりと整理して覚えましょう。